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アルカディアリゾート宮古島
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主要用途:ホテル
構造:RC造
構造設計:西薗博美構造設計事務所
施工:奥浜組・下地島空港施設 建設工事共同企業体
プロデュース:アーキテクツ・スタジオ・ジャパン
家具:Cassina ixc.
所在地:沖縄県宮古島市
竣工:2023年
写真撮影: 小川重雄
* Cassina ixc.
動画撮影: Cassina ixc.
アルカディアリゾート宮古島は、全室スイートルームのラグジュアリーリゾートホテルである。事業主からは、全客室からのオーシャンビュー、プライバシーの確保、地域で最高グレードの品質である事、が求められた。
敷地のある伊良部島南部は起伏が少なく陸から海へなだらかにつながる地形となっている。一方、海岸線には隆起侵食された石灰岩がリアス式状に表れ特徴的な景観を形成しており、計画地の目の前にもプライベートビーチの魅力的な風景が広がっていた。この海への視界・既存景観の継承に配慮しながら、造成と建築を俯瞰的に捉え、一体的に計画を行うことがテーマとなった。
客室は14室、海への眺望を求め間口を抑えた部屋を横並びに置く配置もありえたが、それでは必要なグレードに達し得ず、充分な開放感・海とのつながりを感じることもできない。ここで私達が提案したのは、建築群を等高線にそって3列にまとめ、高低差を設けながら客室を配置する計画である。これによりホテル利用者全ての居場所からオーシャンビューが得られることとなった。
3列の建築は既存地形の等高線に添わせるように置き、海にむかう緩やかな傾斜のなかに馴染むよう配置した。各棟の高さもおさえ、山側からはできるだけ1層分のみが表れるように造成をコントロールしている。敷地内のアイレベルにおいては、原風景を継承し、琉球石灰岩が多く目に映るように配慮した。造成・舗装・アプローチのヒンブン、姿形を変えながらも全てを石灰岩によりつくり、ブーゲンビリアなど沖縄原産の植生を織り交ぜて、ランドスケープを構成した。
客室は異なる6タイプを計画した。専有面積はそれぞれ約120m2〜、約230m2〜、最も大きな客室は630m2の広さがある。各室、外部にプール&ジャグジー、内部にベッドルームの他リビング・ダイニング・キッチン・デイベッドを設え、数日間の滞在をゆったりと楽しむことができる。テラスは深い庇で覆い、沖縄の強い日射しを防ぐ。空間の奥行き・明暗のグラデーションを意識し、左官・木・籐で包まれた静かな居場所から海を見返す視線をイメージした。
また海との出会い方にも配慮した。石壁に開けたゲート、建物間に設けた散策路、各客室を隔てる壁、切り取られた視界の中で個別の海の風景と出会えるように計画した。これら個別の空間を切り取る壁がリズミカルに並び、荒々しく積まれた琉球石灰岩の礎と対照的且つ一体性をもった姿を見せている。
人々は沖縄の離島に美しい海を求めてやってくる。風景のみならず、静かに波の音、潮風を感じられる居場所が求められる。この場所でこそ得られる固有の時間・空間を創り出せればと考えた。